基礎知識

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画筆
筆づくりの起源は正確には判らないほど古く、中国殷の時代(紀元前1600年頃~紀元前1028年)の甲骨片に筆を用いて書かれたとされる文字が見つかっており、既に筆が存在した事実を伝えています。
また、新石器時代末の彩陶に筆で描かれたと思われる文様が見られます。中国で生まれた筆がシルクロードを渡り、西洋に伝わったという説があります。
一方、古代エジプトでは葦などの植物繊維を用い、先をほぐしたものを束ね、筆のようにした道具が存在し、これが西洋の筆の原型、という説もあります。

日本での油彩画筆の歴史は浅く、明治時代に留学した画家が西洋の筆を持ち帰り、研究・試作を始めたのがきっかけだそうです。
しかしながら筆司と呼ばれる日本の優れた筆職人の技術が洋画筆に受け継がれ、世界で最も優れた洋画筆を生産するまでになりました。
セーブル毛
イタチ、貂(てん)、コリンスキーを含めて“セーブル”と総称する。

イタチ毛
タヌキより細くしなやかな軟毛であり、弾力性、復元性に富み、絵具の含みも良く、耐久性にも優れています。
ロシア、北欧、中国、日本などの原毛が使われますが、品質では中国産のものが優れています。

貂毛
毛質はイタチ毛とよく似ていて、非常に優れています。日本、アメリカ、ヨーロッパ産のものを使用します。

コリンスキー
軟毛の代表格。弾力に富み、穂先のまとまりが良く、絵具の含みも良いのが特長です。シベリアから中国北部にかけて棲息しており、寒い地方のものほど良質で、特に雄の尾の毛は長くて優れた品質です。
細密な描写に適しています。
その他の種類
豚毛
剛毛で硬く、耐久性に優れて長持ちするのが豚毛です。1本の毛の先が細かく枝分かれしているので絵具の含み具合が良いのも特長です。
豚毛には反りのクセがあり、その反りの方向を内側に揃えて穂先にしています。豚の背中の毛は太くて長く、脇の毛は細くて短いという違いがあります。原毛は中国の重慶や漢口から輸入されています。

牛毛
絵具の含みが良く、比較的耐久性も良い軟毛。復元性の高さも特長で、牛の耳の毛を使います。
原毛はヨーロッパ、中国、南米から輸入しています。

山羊毛(羊毛)
水含みが非常に良く、まとまりや耐久性に優れています。混毛の際の優れた副材としても有名です。
山羊(さんよう)は日本の山羊と似た動物。原毛は中国から輸入しており、日本の山羊の毛とは材質的に異なるため、代替することはできません。
馬毛
水含みが良く、穂先のまとまりが良いのが馬毛で、ポピュラーな軟毛です。
馬はほとんど全身の毛が使えますが、特に胴毛、足毛がよく使われています。
他の動物の毛と混毛する際の副材としてとしても多く用いられます。日本産は少なく、南米、カナダから輸入しています。

山馬毛(サンバー)
特に日本画で竹、岩肌、枯枝といった硬い質のものを描くときなどに適していると言われています。
サンバーは野生の鹿の一種で馬に似た姿をした動物です。最近では希少動物となっており原毛は中国産を輸入しています。

タヌキ毛
絵具の含みが良く、復元性に優れています。しなやかな毛質が特長で、毛の根元は鋭く細く、先が太いため、穂先に向かってふっくらした形の筆になります。主に中国産が使用されています。

リス毛
絵具の含みが良く、穂先もよくまとまります。柔らかい毛質で、セーブルのような弾力性はありません。使用されるのは主に尾の部分。日本産もありますが、ロシア、北欧、中国産などの北方のものが毛足が長く、良質です。
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